成功に導くブランド創りへ「Fontworks x Monotype」
フォントワークス藤田重信とMonotype小林章がこれまで制作してきた書体やプロジェクトを紹介。和文・欧文書体をより多くの人に自分の身近なものとして感じてもらえるようなセッションです。ビジュアルコミュニケーションやブランドイメージの構築においての書体の重要性について話しました。
藤田重信 [筑紫書体2004〜現在]
筑紫書体は、2004年に5年を経て完成し社運をかけた、筑紫明朝-Lをリリース。他社から発売されていたシャープな印象を持つ一般的な明朝体とは違う、紙の本文で使うことをイメージした活版印刷のようなインキのにじみを感じさせる新しいデザインの書体を制作しました。この書体は、テレビのCMやパッケージにも採用され広く使われるようになりました。
2010年以降は、過去に前例のないデザインの書体を次々生み出し、筑紫Q明朝では、これまで見られなかったカウンターの狭い明朝体を開発しました。その他、明朝体のように本文に使える筑紫ゴシックや、平仮名のデザインが特徴的な筑紫Bオールド明朝、筑紫アンティークゴシックB、筑紫Bヴィンテージ明Rなど数多くの書体を開発し、特徴的なデザインながらもデジタルや紙媒体で幅広く使用されています。
小林章[これまで担当したプロジェクト]
文字のデザインについて、小林が欧米のコンペティションでグランプリを受賞した書体Cliffordを通して話しました。
小林はこれまで、ZapfinoやOptimaを含む数多くの書体を世に送り出してきたヘルマン・ツァップ氏やUniversやFrutigerなど公共機関のサインシステムなどを手掛けたアドリアン・フルティガー氏とも一緒に仕事をし、書体の改良版を制作。
また、企業やブランドのカスタムフォントを手がけたプロジェクトとして、Sony、Alibaba、Mercari、Mazda、Bridgestoneの事例を取り上げ、解説しました。
カスタムフォントの開発は、デザイナーも打ち合わせに最初から参加し企業のニーズや背景を把握することからスタートします。そこから導き出した書体のデザインが、企業からの要望と一致するときにやりがいを感じると話しました。
藤田重信[筑紫書体 現在〜未来について]
藤田が現在開発中の書体について話しました。まずは、2024年リリース予定の筑紫AN丸ゴOVと筑紫RMミンBを紹介。筑紫AN丸ゴOVは、これまでの重ね書体にはない型破りな極太の丸ゴシックです。
筑紫RMミンBは、線の太さのコントラストが特徴的なデザインの書体です。
続いて、5つの開発書体を紹介。横画は細く、ハネやハライを通常より長めにして迫力のあるデザインを追求した筑紫苑L、可愛らしさと優雅さを兼ね備え、斜体でも表現できるようにデザインした筑紫斜体ミンLの他に、筑紫毛筆Mという筆文字や、筑紫宋朝と筑紫楷ゴ-Bを紹介しました。
小林章[企業やブランドにとって書体はなぜ重要なのか?]
書体はコミュニケーションの道具のようなものとして考えています。企業やブランドがどういうメッセージを伝えたいのかをまずは理解し、適切な書体を探していくことになります。その道具の種類が多いのがMonotypeの特徴の一つですが、記号なども含めた書体の使い方やルールを理解することもとても重要です。
藤田・小林[Monotypeとフォントワークスは今後どのような活動をしていきますか?]
藤田:Monotypeの欧文とフォントワークスの和文の組み合わせについて今後検討できたら面白いのではないかと考えています。
小林:Monotypeとフォントワークスの若手デザイナーが今後さらに日本や日本以外でも講演やセミナーなどで活躍の場を広げていくことを期待しています。これによってコーポレートフォントの需要性がアジア圏でも高まっていくのではないでしょうか。
藤田・小林[タイポグラフィや書体デザインの流行はどこからくるのでしょうか?]
小林:流行を掴むのはとても難しいです。Monotypeではトレンドレポートとして毎年発表しているのですが、こういった情報は世界各国から集めて傾向を読み取りレポートしています。また、会社全体でも今後のトレンドを想定しデザインしていくように取り組んでいます。
藤田:トレンドは自分自身が作ると思えるくらいの気合が必要だと考えています。これまでは、一つのトレンドがあり皆が採用していく流れがありましたが、現在では、今までにないものをデザインし、それが認められたいくつものトレンドがあり多様性が反映されているのではないでしょうか。
藤田・小林[文字の扱い方、使われ方が時代とともに変わってきていると思いますが、お二人が感じることは何かありますか?]
小林:1990年代前後から、和文の文章に英語が増えてきました。私もこれからますます英語が使われる機会が増えるだろうと考え、欧文書体を学ぼうと思いました。今後は、より読みやすい表現を心がけた使い方が増えていくことを期待しています。
藤田:使われ方の変化によってデザインも変化しています。例えば、欧文が和文の本文に数単語しか入っていない場合は、そこを見落とさないように強調する必要があったため、太いデザインにしていたという背景があります。現在では、欧文の使用頻度が増えたことより、フラットに見えるようなデザインになってきています。テキスト面の濃度差がありすぎると汚く見えてしまいますからね。
小林:企業のロゴは一度認識すれば、その存在に特に気を使うことはありませんが、使用される書体は異なります。頻繁に更新される企業からのメッセージや新製品、サービスの案内などを文字情報として伝える際に、書体を通して企業のブランドイメージを一緒に伝えています。書体は、まるでブランドの個性や特徴を表現する声のような役割を担っています。
トークイベントの動画を公開中!「Monotype+ 2023」企業やブランドにとっての書体の可能性を探る
「Fontworks × Monotype」藤田重信/小林章
https://youtu.be/2CTZADIylfg
「企業事例から学ぶ、ブランド創り」古川智章/佐藤可士和/小林章
https://youtu.be/79uwfp64jlU
「Webとタイポグラフィの現在地」鈴木丈
https://youtu.be/fZ17sQF3Jak