デジタル向けの中国語書体にサンセリフ体が誕生

M Ying Hei
The M Ying Hei family has filled an important gap in the market for Heiti typefaces and for Chinese typefaces overall.

中国語の書体の多くは、見た目が時代遅れで小さな画面では読みにくいというレッテルを張られてきましたが、M Ying Hei書体がその評判を覆しました。先人ができなかったことすべてをなし遂げたと言っても過言ではありません。

M Ying Hei™は、Monotypeの熟練した書体デザイナーと長年コラボレーションを行ってきたKenneth Kwok、Robin Huiによってデザイン、制作されました。デジタルデバイスのインターフェイスと印刷媒体の両方で優れたパフォーマンスを発揮し、よりモダンでエレガントな中国語サンセリフ体を求める声に応える書体の開発に成功したのです。

「MonotypeとMIT Age Labとの共同研究によると、他のHei系やMing系の書体に比べ、M Ying Heiで書かれた文章は瞬読性が高いことがわかりました」

ベストセラーの中国語書体を21世紀向けに一新

まず、M Ying Hei書体の由来をご紹介します。M Ying Heiは、優雅で上品な書体M Heiに大きなインスピレーションを受けています。M Heiは、1990年代にMonotypeがリリースしたクラシックなデザインの書体で、発表されるや否や瞬く間に中国語サンセリフ体のベストセラーとなりました。M Heiは、中国語繁体字の正式書体「楷書体」の構造とプロポーションをベースとしながら、ミニマルで鋭いストロークのデザインを取り入れたことから、Heiti系書体に分類されています。Heiti系は、1500年もの間、中国語における漢字の形体を定義してきた精巧な楷書体から装飾的要素を取り除いた、非常にシンプルな字体です。

M Ying Hei specimen

M Ying Hei サンプル

中国語書体のすべてのカテゴリにおいて、Heitiはグラフィックデザイナーの間で最も人気のある書体となり、現代中国のライフスタイルを表現する代表的な文字としての存在を確立しました。それは、西洋でグロテスク・サンセリフ書体(Helvetica®など)が現代的な字体として定着したのと同じ現象と言えるでしょう。Heitiは、装飾要素を廃した落ち着いたトーンの書体で、読み手にモダンな雰囲気を印象づけます。言語の境界を越えて使用が可能で、縦横の線の太さが同じ書体ときれいに調和します。

Kaishuと同様の質を備えていることから、M Heiは他のHeitiデザインとは対照的に、比較的クラシックな構造をしています。

古いKaishu書体と新しいHeiti書体の両方の良い部分を併せもつM Heiは、中国語書体の世界における「稀に見る宝石」との呼び名が付くほどのデザインとなりました。また、香港と台湾では過去25年間にわたり、継続して読み続ける長文書用の書体として最も好まれる書体となりました。そして、モバイル技術の時代が到来したのです。

情報時代のための中国語サンセリフ体

携帯電話などの小型画面用に、滑らかで、可読性と柔軟性の高い中国語の書体に対する需要が高まることを予見したMonotypeの書体デザインチームは、デジタル画面でも美しく表示される高性能のHeiti書体の開発に乗り出しました。MonotypeのM Ying Hei書体は、この新しい時代の到来を念頭に制作されました。

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M Ying Heiでは、漢字の中央部を広く取ることができます

かつては不可能だったことが、この新しいデザインで可能になったのはなぜでしょうか。M Ying Heiは、漢字の中央部を広く取ることができるのです。これは、ラテン文字でエックスハイトを大きくするのと似ています。この調整が可能になったことで、Neue Helveticaのようにはっきりとした機能的な書体との組み合わせが非常に美しく仕上がり、モダンで親しみやすい雰囲気を生み出すことができるようになりました。

また、最も重要な点は、漢字の中央部が広がることにより、デジタルデバイスのインターフェイスと紙媒体の両方で可読性が高まったことです。各文字内のスペースが広くなることで、標識や看板でも見やすくなり、バックライトのある画面も容易に克服できるようになったのです。

一目で読める高度な可読性

M Ying Hei書体は、可読性を最も重要視してデザインされており、車のダッシュボードやGPSシステムの情報表示の最適化を念頭に開発作業が展開されました。運転中は、道路から目を離す時間を最小限にとどめつつ、画面に表示された文字を素早く正確に読み取ることが必要です。そのため、この開発作業には通常よりも多大な配慮が要求されました。

使命は達成されたのです!「The effects of Chinese typeface design, stroke weight, and contrast polarity on glance based legibility」(『Display』刊行、MonotypeとMIT Age Labの研究員が共同執筆)によると、別のHei系、Ming系の書体に比べ、M Ying Heiは瞬読性が高いことがわかりました。たとえば、Monotype製のM Ying Hei系書体の中では可読性が最も低いMonotype Sung PRCでも、「Ming」系書体より認識時間が33.0%短縮、Microsoft YaHei Regularとの比較では20.9%、「Rounded Gothic(丸ゴシック)」書体のCYuen2PRC SemiBoldより19.0%短縮されています。

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書体の可読性の高さは、正確な判読に必要な時間の長さと反比例するのです

他の書体と合わせることにも。

M Ying Heiには他にも優れた長所があります。グローバルブランドにとっては、Neue Helvetica®、Neue Frutiger®、Avenir® Next、Univers® Next、Trade Gothic® Next、Neue Haas Unica™などのコーポレート書体として人気の高いものとM Ying Heiが美しく組み合わせられることも、メリットの1つでしょう。

ほど良く配慮されたウエイトのバラエティ

あらゆるコンテンポラリーな字体で不可欠となった5種類のウェイトを揃えたM Ying Heiファミリーは、さまざまなアプリケーションの要求に対応可能、効果的な情報階層を構築します。ウェイトの遷移はスムーズ。印刷物からバックライト式標識、オフセット印刷、高解像・小画面のデバイスに至るまで、幅広いメディアに最適な表示を実現します。ウェイトのバリエーションにより、各種ラテン書体との併用も簡単です。

長く愛される次世代フォント

M Ying Heiファミリーは、Heiti書体と中国語書体全般に関してこれまで市場に存在していた大きな空白を埋めたと言えるでしょう。「生みの親」ともいえる元の書体から受け継いだ要素を踏まえると、M Ying Heiは現在世界中で活躍するデザイナーの力強い武器となり、今後も長く愛用されることでしょう。

fonts.comから、M Ying Hei PRC (簡体字中国語)、または M Ying Hei HK (繁体字中国語)をダウンロード

The Studio team.

Robin Hui

Robin Hui

Robin Huiは1988年に書体デザイナーとしてMonotype Hong Kongに入社しました。現在 Monotype Hong Kongの主任デザイン・プロダクションマネージャーを務め、様々な書体デザインやテクノロジープロジェクトを任されています。異なるプラットフォーム間での書体の圧縮、ヒンティング、レンダリング制御も彼の仕事です。Monotypeへの入社前は、10年間プロの植字工を務め、書体の効果的な活用における経験を積み、中国語書体に対する強い情熱を抱くようになりました。