リブラディングで生まれた、M&M’Sの新しいカスタムフォント
Charles Nix(チャールズ・ニックス)、クゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター
M&M’S®は80年以上にわたり、世界中の人々を魅了してきました。時代の変化を受け、より親しみやすい世界観を作るためプロジェクトはスタートしました。有名なM&M’Sのキャラクターも刷新され、All Togetherという名前のカスタムフォントが誕生しました。この書体は、温かみがあり、遊び心のある、インタラクティブなフォントファミリーです。
Monotypeは、M&M’Sのエージェンシーであるジョーンズ・ノウルズ・リッチー(Jones Knowles Ritchie 以下JKR)を通してM&M’Sのフォントデザインの依頼を受けました。グローバルな言語サポートができるMonotypeの強みが重要なポイントでした。
プロジェクトの初期段階からのスケッチ
コラボレーションを進めるにあたり、M&M’Sのビジョンを明確に把握しました。「M&M’S最初の重要なポイントは、パーソナリティです。新しい書体は、すぐに「M&M’S」と認識できる必要がありました。
ビンテージなM&M’Sを思い起こさせる、大きくて太い、個性的なスラブセリフ*1のスタイルを採用し、ブランドの個性を強調しました。笑顔のようなインクトラップ*2やキャンディそっくりのボールターミナル*3など、遊び心あるディテールを取り入れることで、より楽しさを表現することができました。
*1 スラブセリフ(Slab Serif)は、フォントデザインの一種で、文字の末端に太い水平な線(セリフ)が付いている特徴を持つフォントです。このセリフが特に太くて突出しているのが特徴であり、文字がより鮮明で強調された印象を与えます。スラブセリフはしばしば堅実で力強い雰囲気を持ち、見出しやポスター、看板などに使用されることがあります。
スラブセリフ書体の例:Next DIN Slab
*2 インクトラップ(Ink trap)は、フォントデザインにおいて、印刷時にインクが溢れてしまうことを防ぐために、文字の角やジョイント部分に切り込みやくぼみを設けるデザイン要素です。これにより、印刷された文字が鮮明に表示されると同時に、インクの広がりやにじみを防ぐ効果があります。特に小さな文字や低解像度の環境で効果的です。
*3 ボールターミナル(Ball Terminal)は、フォントデザインにおいて、文字の末端が球状の形状を持つデザイン要素です。このような形状は、文字の末端部分が円や球のようになっており、柔らかさや親しみやすさを演出する効果があります。ボールターミナルは、フォントの個性を強調するために用いられることがあります。近年このデザインは、トレンドの一つでもあります。
欧文書体のトレンド「Type Trends Report 2023」について
柔軟性も重要な要素の一つでした。All Togetherは、パッケージから動画、デジタルテキストまであらゆる場面で使用される予定でした。そのため、バリアブルフォント*4を使用することが決定されました。これにより、単一のフォントファイル内で幅、サイズ、ウェイト、スタイルを組み込むことができます。All Together SansとAll Together Serifは、幅広いバリエーションが表現でき、小さくて密なパッケージテキストに適した鮮明なタイプから、魅力的な見出しやアニメーションまでクリアな文字の印象のデザインを実現します。
*4 バリアブルフォント(Variable Font)は、一つのフォントファイル内で複数のウェイト(太さ)、幅、斜体などのスタイルバリエーションを持つフォントの形式です。これにより、従来の固定されたウェイトやスタイルだけでなく、連続的な調整が可能なフォントが作成されます。バリアブルフォントは、デザイナーや開発者に柔軟性を提供し、異なるスタイルやサイズのテキストを効果的に表現できるようにします。
バリアブルフォントの例:FF DIN Variable
JKRの担当者は次のように述べています。「M&M’Sのような大規模なブランドでは、書体に対して柔軟性が不可欠です。サンセリフとセリフ*3のファミリーを両方持つことで、機能的な情報と遊び心があり大胆で目を引くという両方を表現するための柔軟性が得られます。まず最初に、All Together Serifを使用しました。これは、ロゴのデザインとセリフからインスパイアを受けています。だからこそ、見るとすぐにM&M’Sの雰囲気が感じられます。」
*5 サンセリフ(Sans Serif)は、文字の末端にセリフ(装飾的な尾部)がないフォントデザインです。セリフ(Serif)は、文字の末端に付いた小さな装飾や突起を指します。サンセリフは一般的に洗練された、現代的な印象を持ちます。セリフ付きのフォント(セリフフォント)は、伝統的でクラシックな外観を持ち、印刷物や本文に使用されることが多いです。
サンセリフ書体の例:Helvetica Now
セリフ書体の例:Walbaum
さらに多くのオプションがあることで、デザイナーは自由に文字を組み合わせたり対比させたりして、メッセージに合った完璧な外観や感情を実現することができます。Monotypeのエクゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターであるチャールズ・ニックス(Charles Nix)は次のように述べています。「サンセリフ書体とセリフ書体を含むAll Together ファミリーは、バリアブルフォントを採用することで、従来のフォント形式では表現できなかった幅広いバリエーションを持つことができ、幅、サイズ、ウェイト、スタイルなどの特性を柔軟に変更することができます。これにより、新しい多次元のデザイン空間を作り出し、より流動的で表現豊かなビジュアルを作成することができます。」
「私にとって答えが突然ひらめいた『なるほど!』と思える瞬間は、リブランディングされた書体がブランドの声で話し始めるのを見たときです。このファミリーの中には、非常に表現豊かな要素があるため、異なる文字セットでも、それぞれがユニークな声を発信することができます。」
M&M’Sの新しいカスタムフォントは、 We’re All Together, and there’s strength in our diversity.(共に連携し、多様な個性や背景を持つ人々が集まることで、結束と力が生まれること)というビジョンを体現しています。
書体はリブランディングに重要な要素の一つです。時代の変化に合わせて企業のブランドも変わっていく必要があります。これまで大切にしてきた企業のイメージやブランドの雰囲気はそのままに現代にマッチするロゴのデザインや和文にマッチした欧文書体などのご提案も可能です。リブランドの際に、ロゴや書体は企業にとってどう重要なのか?などのMonotypeが直接企業の皆さんに基本的なタイポグラフィに関するセミナーやワークショップを開催することも可能です。
タイポグラフィに関して、お手伝いできることはありますか?多言語を必要とする海外展開のためのコーポレートフォントや選定書体のご相談など、まずはお気軽にお問い合わせください。無料相談会も実施しています。
1. フォントのライセンスや使用条件
商用利用やオンラインでの使用に制約がある場合、ライセンスについてご説明いたします。
2. フォントの選択に迷っている
企業ブランドに適切なフォントを選ぶことが難しい場合、目的やブランドイメージに合ったフォントを見つけるお手伝いをいたします。
3. フォントのカスタマイズ
リブランディングなど特定の要件に合わせてフォントをカスタマイズしたり、変更したりする必要がある場合、その企業のフェーズやご要望に沿った形でプランをご提案いたします。
4. フォントの検証や評価
複数のフォントを比較したり、検証したり、どれが最適な選択肢かを判断する必要がある場合、専門的なアドバイスをいたします。例えば、現状のブランドロゴや使用書体についての評価、問題点などをフィーバックし解決方法をご提案します。